【キオクシア日記 #2】5万円が増えて、溶けて、また戻った。AI半導体株は情緒が不安定

【キオクシア日記 #2】5万円が増えて、溶けて、また戻った。AI半導体株は情緒が不安定

2026年8月14日 10:49
窓際部屋|絶望の窓際族
窓際部屋|絶望の窓際族
vwenwpdi

この投稿をシェア

この投稿を友だちに紹介しましょう。

Xでシェア LINEでシェア

2026年8月1日、キオクシアホールディングスの株に5万円を入れた。

正確には8月1日は土曜日なので、実際に株式市場が動き出したのは週明けの3日からだ。

なぜキオクシアなのか。

AIが伸びれば、計算する半導体だけでなく、膨大なデータを保存するNAND型フラッシュメモリやSSDも必要になる。キオクシアは、そこを作っている会社だ。

つまり私は、AI時代の「記憶」に5万円を託した。

会社では存在を忘れられつつある窓際族が、世界の記憶を支える会社を買う。なかなか美しい構図である。

5万円を入れたら、いきなり4万8,643円になった

購入直後の評価額は4万8,643円。

開始早々、1,357円のマイナスである。

なお、この差額がすべて手数料とは限らない。約定価格と評価時点の株価の差、取引サービスのスプレッドなどもあり得る。株というものは、入社初日から研修もせずにダメ出しをしてくる上司のように、最初からこちらの心を折りにくる。

ところが8月5日、評価額は約5万3,700円まで上昇した。

わずか数日で約3,700円のプラス。

会社員の給料は3日で7%も上がらないが、株は上がる。昇給を待つより株価を見た方が早い。そう思わせてから地面に叩きつけるのが、相場の基本的な接客マニュアルである。

翌日、利益が消えた

8月5日のキオクシア株は終値5万4,300円だった。

翌6日は4万8,740円。1日で10.24%下落した。

私の評価額も4万7,000円台まで沈んだ。

昨日までの含み益は消滅。代わりに「やっぱり俺が買うと下がる」という、個人投資家に標準装備されている被害妄想だけが残った。

この急落には理由がある。

キオクシアと国内工場を共同運営する米サンディスクが決算を発表し、売上高見通しが市場予想に届かなかった。これを受けてサンディスク株が時間外取引で売られ、同じNAND・SSD市場で動くキオクシアにも売りが波及した。

要するに、アメリカの親戚が少し暗い顔をしただけで、日本にいる私の5万円まで具合が悪くなったのである。半導体株の親族ネットワークは、田舎の法事より情報伝達が速い。

それでも業績は、ちょっと意味が分からないほど強い

株価は情緒不安定だが、キオクシアの足元の業績は強烈だ。

7月31日に発表された2027年3月期第1四半期の売上収益は1兆7,671億円。

前年同期比415.5%増。

営業利益は1兆2,700億円だった。

3カ月で営業利益1兆2,700億円。

年収600万円の会社員なら約21万人分である。氷河期世代が束になって一生懸命働いても、企業の四半期決算には勝てない。そもそも束にしてもらえるだけの正規雇用がなかった。

好調の主因は、生成AI向けデータセンターでSSD需要が増え、NANDの平均販売単価も大きく上昇したこと。さらに4〜6月期の平均為替レートは1ドル160円で、前年同期の145円より円安だった。海外売上の大きいキオクシアには、円安も追い風になった。

加えて会社は、上限8,000億円の自社株買いと、1株を3株にする株式分割を発表した。

自社株買いは8月3日から10日までの6営業日で終了。会社は1,613万3,500株を、ほぼ上限いっぱいの7,999億9768万9,000円で買った。単純計算の平均取得価格は約4万9,586円になる。

この期間、キオクシア自身が市場に現れた巨大な買い手だったわけだ。私が5万円を握りしめて震えている横で、会社は8,000億円を使って自社株を回収していた。資本主義では、同じ「買う」でも握力が違う。

お盆前、5万2,600円まで戻る

8月7日には一時4万4,170円まで下げたが、その後は反発した。

8月12日の終値は4万9,870円、13日は5万1,800円。14日の朝には5万5,000円前後まで上昇する場面があり、録音時点で私の評価額は約5万2,600円になった。

元手5万円に対して約2,600円、率にして5.2%のプラスである。

この戻りは、キオクシア固有の新材料だけで説明するより、半導体株全体への資金回帰と見る方が自然だ。8月14日は、米国の物価指標が市場予想を下回ったことで投資家心理が改善し、前日の米市場でサンディスクやマイクロンなどが買われた。その流れが日本のAI・半導体株にも続いた。

落ちた理由もアメリカ。戻った理由もアメリカ。

我々の老後資金は、今日も時差の向こう側で振り回されている。

「売らなければ負けではない」は、半分正しくて半分危険

私は基本的に、少し下がっただけでは売らない。

5万円で買ったものが4万円になっても、事業の前提が壊れておらず、やがて6万円になると考えられるなら待つ。過去にはHIS株で待ち続け、見事に戻らないという修行も経験した。

ただし、「売らなければ損ではない」は危険な呪文でもある。

売らなければ損失が確定しないだけで、資産価値はすでに減っている。戻る保証もない。預金と違って、個別株は会社や業界の前提が壊れれば、そのまま帰ってこないこともある。

キオクシアについて今後見るべきなのは、次の4点だ。

  • AIデータセンター向けSSD需要が続くか
  • NAND価格の上昇が止まらないか
  • サンディスクや韓国勢の増産で供給過剰にならないか
  • 円高に振れたとき、利益の追い風がどこまで弱まるか

キオクシア株は、2026年1月の1万円台から6月22日に11万2,700円まで上がり、その後は一時半値以下になった。

事業が強いことと、株価が素直に上がることは別である。

会社の業績は優等生。株価は授業中に急に教室を飛び出す問題児。私はその問題児に5万円を預けて、数カ月ほど保護観察することにした。

現在の戦績は、5万円が5万2,600円。

プラス2,600円。

まだ勝利ではない。お盆休みに少し機嫌がよくなっただけである。

次回、キオクシアはさらに上がるのか。それとも、私の含み益だけ先に夏休みを終えるのか。

氷河期窓際族とAI半導体株の、資本主義観察日記は続く。

窓際部屋|絶望の窓際族

窓際部屋|絶望の窓際族

by 絶望の窓際族